魅惑のムーンフェイズ【合わせ方】とその仕組み

一般的なムーンフェイズの仕組みについて解説します。

ムーンフェイズのディスクは通常、カレンダー機構と同様に、一日一歯、ディスクの歯車を送ることにより月相を変化させています。

月の周期は一般的に29.5日(29日12時間) です。

しかし0.5日分の歯は出来ないので、ディスクに月を二つ描き、一枚のディスクで２周期分のムーンフェイズを表現することにより、歯数が整数の59となり、その機構を可能にしています。

なので、大抵はディスクの半分を隠し、また月の満ち欠けのために、両端が半円形になった窓が、ダイヤルに開いています。

こうすることで、見た目は一つの月しか見えず、また、上弦の月や下弦の月が表現されるようになります。

つまり、ムーンフェイズは、59日で一周するディスクの機構で構成されています。

ムーンフェイズ早送り機構は、この歯車を一つずつ送れる機構なので、ムーンフェイズを合わせる際は、満月や新月から何日目に合わせるかということがポイントになるんですね。

上記で、月の周期は29.5日 (29日12時間) と書きました。

しかし実際の月の周期は、平均で 「29日12時間44分2.8秒」 程度(※)です。

よって、29.5日で設計されているムーンフェイズは、毎周期 44分2.8秒 程度の誤差が生まれます。

この周期が積み重なり１日の誤差となるのが、約 2年7か月20日 後となります。

高精度ムーンフェイズと呼ばれる時計は、29日12時間45分(またはそれ以上の精度) で設計されています。

その誤差は 57.2秒/周期 程度となります。

この場合、約1日 程度の誤差が生まれるのが、 122年後ということになるわけです。

※程度と表現したのは、この周期も一定ではなく、変化するためです。
実際の月の公転軌道は楕円で、またその楕円軌道の向きも変化します。
さらに、その楕円軌道により公転速度も変化するなど、実は複雑な動きをしています。
月齢や月相のように定義や便宜上の理由もあり、多分に誤差要素を含むためムーンフェイズは、あまり正確に表現するものではありませんので、夜月を見上げる気軽な気持ちで眺めるのがいいようです。

ご存じの通り、現在使用されている太陽暦(グレゴリオ暦)以前、紀元前から、新月を含む日を毎月の初日とし、月の周期で１か月が決まる太陰暦が広く使われていました。

日本でも明治六年に太陽暦が採用されるまで、太陰太陽暦(閏月を含む太陰暦)と言われる旧暦が採用されており、月の周期は生活に密接な関係がありました。

今でも、迎春や中秋の名月という行事や習慣にその名残が残っています。

時計におけるムーンフェイズとしては、16世紀頃の置き時計に見られ、18世紀に入って懐中時計に取り入れられ、1940年代に腕時計に組み込まれ始めました。

ひと昔前までは、航海術や漁に出るタイミング、暦や年間行事を決める際にも重要な役割を果たしていたんですね。

今でも、イスラム教において、ラマダン等の年間行事が月相により決められています。

ムーンフェイズは、月齢か？月相か？

月齢とは、月の満ち欠けを知るための目安になる数字で、新月を 0として、「新月から何日経過したか」を少数点 第1位までで表します。
月齢を数え始めるのは新月の瞬間からで、その後は正午の月齢をその日の月齢とするため、半端な数字になります。
よって満月の月齢も 14前後で変化します。

月相とは、「月面の太陽光を反射して輝いて見える部分を地球中心から見たときの様相」で、日本では一般的に 1周を 360°のかわりに 28 で分割した値の整数で表されます。

よって一般的な時計のムーンフェイズは、刻一刻と変化する月相を 1日ごとに 1歯送る機構で表現しているので、「月齢を月相風に表現している」と言えます。