素材・材質から考える 時計選び【主要材質8種】のメリット・デメリット

  • 時計ケースの素材ってどんなものがあるの?
  • 結局どれが一番硬い素材?
  • 軽いケースを選ぶなら。
  • あの新素材って、ぶっちゃけどうなんだろう。
  • 金属アレルギーにも安心な材質はどれ?

こんな疑問をお持ちの方のために、腕時計ケースの素材・材質についてまとめてみました。

素材・材質から考える、時計選び【主要素材8種】のメリット・デメリット

ほんの50年ほど前まで、ケース素材と言えば、貴金属ステンレススチールがほとんどでした。

しかし今では、新しい素材が続々と開発され、より使いやすく、使い勝手の良いものが増えてきました。

また、ステンレススチールにおいても、ますます丈夫で腐食しにくい合金開発されています。

その多種多様な素材の中から、個人の使い方や好みによって、最適なものを選ぶことができますが、選択肢が多い分、迷いも多く、決めあぐねるという方も多いはず。

軽い硬い素材がたくさんあるけど、どれが一番軽いの?硬いの?という疑問もよく聞きます。

今回は時計に使われる主要素材 8 種のわかりやすい、重さランキング・硬さランキングの後に、各素材・材質について、メリット・デメリットと共に解説していきます。

なお今回は、一般的に時計に使われる素材、または一般的な合金をピックアップしてまとめています。

現在、ほとんどの素材は合金として使用されています。
また、その合金もたくさんの種類から用途によって使い分けられており、同じ素材でも合金の構成要素によって、その特徴は大きく変わります。
さらに、同じ合金でも、素材の製造方法、ケースの加工方法、表面処理、熱処理、使用条件、試験条件等々により数値は変わってしまい、ランキングの近い素材同士は、その順位が前後することもあり得ます。
数値に関してはあくまで比較のための参考値としてご理解ください。

1. 重さランキング

素材別に重さを比較できる重さランキングを作成しました。

これで、重さ比較は一目瞭然。

重い順ランキングです。

順位素材比重(※)
1位 プラチナ「Pt950」20.7
2位超硬合金「炭化タングステン」15.5
3位金「Au750」15
4位ブロンズ「CAC406」8.8
5位ステンレススチール「SUS316L」7.9
6位セラミック「酸化ジルコニウム」5.7
7位チタン「60種 (Grade 5)」4.5
8位カーボン「C/Cコンポジット」1.5

※比重:一定体積を占める物質の質量を、同体積の標準物質(通常は4℃における水)の質量で割ったもの。数が大きいほど重い物質。

2. 硬さランキング

素材別に硬さを比較できる硬さランキングを作成しました。

順位素材硬度(ビッカース硬さ)
1位セラミック「酸化ジルコニウム」1300
2位超硬合金「炭化タングステン」1300
3位チタン「60種 (Grade 5)」300
4位ステンレススチール「SUS316L」190
5位カーボン「C/Cコンポジット」100
6位ブロンズ「CAC406」60
7位プラチナ「Pt950」50
8位金「Au750」25

硬さに関しては、様々な試験方法が存在し、その素材の特徴、使用目的により適切な試験方法を選ばなければなりません。

よって、性質の大きく異なる素材をすべて同じ指標で比較するのは本来難しいのですが、今回は参考比較のため、多少強引ではありますが、換算概算して数値を適用しています。

硬度に関しては、あくまで参考値としてご理解ください。

ビッカース硬さ
硬さを表す尺度の一つで、押込み硬さの一種。
ダイヤモンドでできた剛体(圧子)を被試験物に対して押込み、そのときにできるくぼみ(圧痕)の面積の大小で硬さを評価する。

3. 主要素材 8 種解説

それでは、それぞれの素材についてメリット、デメリットと共にご紹介します。

まずは、各素材の特徴をまとめた表から。

素材重さ硬さ耐食性金属アレルギー価格
ステンレススチール「SUS316L」×
金「Au750」××
チタン「60種 (Grade 5)」
カーボン「C/Cコンポジット」×
セラミック「酸化ジルコニウム」
超硬合金「炭化タングステン」××
ブロンズ「CAC406」××
 プラチナ「Pt950」××

①ステンレススチール「SUS316L」

素材重さ硬さ耐食性金属アレルギー価格
ステンレススチール「SUS316L」×

ステンレススチールとは、鉄にクロムやニッケルを混ぜた鋼合金です。

「ステン(stain)=錆び」と「レス(less)=ない」という言葉の通り、錆びにくく、しかも高硬度で安定した耐久性を持っています。

ただ、あくまでもスチール、使用環境によっては錆びることがありますので、他の耐食性に優れた素材と比較すると△となります。

一般的に時計に使用されるのは、オーステナイト系ステンレス鋼で、加工性、溶接性、耐食性、コスト面などのバランスに優れているため、広く使用されています。

もっとも一般的な「SUS304」に、さらにモリブデンとニッケルを加え、炭素の量を減らしたものが「SUS316L」で、非常に腐食に強い、ハイグレード素材です。

クロムとニッケルを含みますので、金属アレルギーの方は注意が必要です。

メリット:適度な硬さと重さ。コストパフォーマンス良。メンテナンス性良。

デメリット:耐食性が万全とは言えない。金属アレルギーの方は避けた方が良い。

②金「Au750」

素材重さ硬さ耐食性金属アレルギー価格
金「Au750」××

古来から最もポピュラーな貴金属、「金」。

中でもAu750(18金)は、75%が金、残りの25%が割り金と呼ばれる、銀、銅、亜鉛、パラジウム等で構成されます。

この割り金の割合により色味が変わり、イエローゴールド、レッドゴールド、ホワイトゴールド等となります。

やわらかい素材のため、デザイン性に優れる一方、傷つきやすいという側面もあります。

また、耐食性に優れた素材ですが、表面の酸化膜が変色し、黒ずんだりしますので、汗、温泉、海水等には注意を払う必要があります。

銅、亜鉛、パラジウムなどを含むことがありますので、金属アレルギーの方はご注意ください。

ちなみに、ホワイトゴールドは本来の黄色味をカバーするため、概ねロジウムメッキが施されています。

メリット:高級感。金属自体の資産価値。デザインの自由度。
デメリット:傷つきやすい。変色しやすい。重量感あり。高価。手入れが必要。アレルギー注意。

③チタン「60種 (Grade 5)」

素材重さ硬さ耐食性金属アレルギー価格
チタン「60種 (Grade 5)」

1946年頃から実用化された、軽量なうえに非常に強度に優れ、さらに耐熱性にも優れることから、航空宇宙、医療分野でも注目される素材です。

その強度はおよそ鉄の2倍、アルミの3倍にもなります。

また耐食性にも優れ、特に海水に対しては、プラチナに匹敵する性能を発揮します。

60種 (Grade 5)は、純チタンに、アルミニウム、バナジウム、炭素を加えたもっとも一般的なチタン合金です。

純チタンよりもさらに強度が高いうえに、同等の剛性と熱特性を備え、海水からの耐食性があり、優れた耐疲労性も兼ね備える優れもの。

その反面、加工が難しいという側面もあり、特に鏡面仕上げには厄介な素材ですので、チタンの再研磨は断られることもあります。

新素材で、難加工性とあって高価と思われがちですが、時計業界ではステンレススチールと同等の価格帯であることが多いようです。

金属アレルギーを引き起こさない金属としても知られています。(ごくまれにアレルギー症状が出る事例があるようです。)

メリット:軽量。金属アレルギー良。コストパフォーマンス。
デメリット:色味に好み有。加工性。

④カーボン「C/Cコンポジット」

素材重さ硬さ耐食性金属アレルギー価格
カーボン「C/Cコンポジット」×

カーボンとは一般的に、元素のひとつ「炭素」のことで、炭素で構成されたものを総称して「カーボン」と呼ばれています。

時計に使われる「カーボン」としては、主に二種類あります。

①「CFRP(Carbon Fiber Reinforced Carbon)」
テニスラケットや車体によく見る、格子模様のものです。日本語では「炭素繊維強化プラスチック」と呼ばれることからも分かる通り、プラスチックを炭素繊維で強化したものと言えます。

②「C/Cコンポジット(Carbon Fiber Reinforced Carbon Composite)」で、簡単に言うとCFRPを、 焼成して、樹脂の部分を炭化させたものです。
日本語では「炭素繊維強化炭素複合素材」と呼ばれ、まだら模様のものがよく見られます。

車、時計業界でよく使われる「フォージドカーボン」は両方を混在して使われているようですので、こちらでは「C/Cコンポジット」として紹介しています。

「C/Cコンポジット」は、軽く強度が高く腐食しない素材で、金属素材からの代替素材として注目されています。

また、熱的にも化学的にも安定しているため、自動車や航空機分野でも広く採用されています。

金属アレルギーの方にも安心です。

しかし、ケースがカーボンでも、ケースバックやケースバックのネジに金属を使用しているものも多数ありますのでご注意ください。

衝撃にも強いといわれますが、カーボン自体が強くても、時計の中身を守れるとは限りません。
基本的にケースが、どんな素材でも時計を落とすなどの強い衝撃はNGですのでご注意ください。

メリット:軽量。耐食性。金属アレルギー良。模様は唯一無二。
デメリット:傷付きやすい。基本的に再研磨不可。

※硬さに関しては未知数の部分があり、こちらではあくまでプラスチック母材として、エポキシ樹脂の値を採用してご紹介しています。

⑤セラミック「酸化ジルコニウム」

素材重さ硬さ耐食性金属アレルギー価格
セラミック「酸化ジルコニウム」

セラミックとは、陶磁器を含む窯業製品の総称として用いられ、「無機物を加熱処理し焼き固めた焼結体」を指す言葉として用いられています。

時計に用いられる酸化ジルコニウムは靭性(割れにくさ)に難点のあるセラミックにおいて、高い靭性が特徴の素材です。

歯科材料や刃物にも使用されています。

金属アレルギーの方にも安心です。

しかし、ケースがセラミックでも、ケースバックやケースバックのネジに金属を使用しているものも多数ありますのでご注意ください。

メリット:高硬度。耐食性。金属アレルギー良。
デメリット:基本的に再研磨不可。衝撃に弱く、割れやすい。

⑥超硬合金「炭化タングステン」

素材重さ硬さ耐食性金属アレルギー価格
超硬合金「炭化タングステン」××

超硬合金とは、硬質の金属炭化物と鉄系金属で構成される合金のことを言います。硬質の金属炭化物の粉末を焼結して作られる合金で、単に超硬とも呼ばれます。

硬度、圧縮強度、比重が高い一方で、衝撃強度や破壊靭性は、劣ります。

代表的な超硬合金は、炭化タングステン(WC、タングステン・カーバイド)と結合剤であるコバルトとを混合して焼結したものです。

超硬合金は腐食しますが、スチールなどの錆とは異なり、白濁します。

これは超硬合金の結合金属であるコバルトが水等と反応し溶出したもので、強度低下を引き起こしますので注意が必要です。

コバルトが含まれますので、金属アレルギーの方はご注意ください。

メリット:高硬度。
デメリット:重い。基本的に再研磨不可。衝撃に弱く、割れやすい。

⑦ブロンズ「CAC406」

素材重さ硬さ耐食性金属アレルギー価格
ブロンズ「CAC406」××

ブロンズとは、日本語では青銅と呼ばれ、銅 を主成分とし、スズ を含む、古代から使われている銅合金です。

なかでも「CAC406」は砲金とも呼ばれ、鉛や亜鉛を加えることにより、靱性(※)に富む性質があることから大砲の砲身の材料に使用されていました。

鋳造が容易で、耐摩擦性耐食性に優れた材料です。

耐食性に優れた素材ではありますが、表面の酸化膜により10円玉のように変色します

色の変化は一般的に下記のように変化していきます。
赤褐色 → 褐色 → 暗褐色 → 黒褐色 → 緑青色

この色の変化が、使われる方、使い方、環境により様々であるため、その変化を楽しめる素材として、昨今のブロンズ製品ブームを巻き起こしました。

すず、亜鉛を含みますので、金属アレルギーの方は注意が必要です。

メリット:唯一無二の経年変化を楽しめる。
デメリット:傷つきやすい。光沢を維持しにくい。金属アレルギーに注意。

※靱性:材料の粘り強さ。物質の脆性破壊に対する抵抗の程度、あるいはき裂による強度低下に対する抵抗の程度のことで、端的には破壊に対する感受性や抵抗を意味する。

ブロンズは、時計の機能を損なわないよう、適切に経年変化させるためにも、お手入れが重要です。
お手入れ方法と、道具は下記からご確認下さい。

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⑧プラチナ「Pt950」

素材重さ硬さ耐食性金属アレルギー価格
 プラチナ「Pt950」××

日本では、白金とも呼ばれ、白い銀色の光沢(銀色)を持ち、また化学的に非常に安定であるため、装飾品に多く利用されています。

ちなみに、ホワイトゴールドは白色金と呼ばれますが、あくまで金であるため、当然プラチナとは全く異なります。

しかし、ホワイトゴールドもプラチナもロジウムメッキを施されることが多いため、見た目には同色に見えることがあります。

「Pt950」は、95%の純プラチナと、パラジウム、ルテニウム、ニッケル、銀などの割り金で構成されるプラチナ合金です。

割り金の構成により、硬さや色味が調整されています。

パラジウム、ニッケルを含むことがありますので、金属アレルギーの方は注意が必要です。

ちなみに、プラチナの純度には国際基準があります。国際的には、Pt950以上のものしかプラチナと呼んではいけないというルールがあるので、スイスメイドの時計には、主にPt950が使用されます。

メリット:耐食性良。金属自体の資産価値。
デメリット:重い。高価。金属アリルギー注意。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

今回は「主要8種の材料についてご紹介しましたが、こんな材料についても知りたいという方はお問い合わせから要望頂ければ幸いです。

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また時計を購入する前に、レンタルして着けてみると、その材料の質感やフィット感、実際の重さ等、自分に合った時計選びの助けになるかと思います。
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