【超絶美しい】機械式腕時計ムーブメントの装飾仕上げ

  • 機械式時計はなぜあんなに美しい?
  • ムーブメントの仕上げにはいろんな種類があるの?
  • 機械式時計の価値を見極めるには?
  • あの仕上げってどうやってるの?

こんな疑問をお持ちの方に、現役時計修理師が、忖度なしに機械式時計ムーブメントの装飾仕上げについて、わかりやすく解説します。

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【超絶美しい】機械式腕時計ムーブメントの装飾仕上げ

▲ WORLD COMMERCE CORPORATION

機械式時計はなぜあんなに高価なのか。

なぜ資産価値があるのか。

その理由の一つに、機械式時計ムーブメントの装飾仕上げがあります。

▲ WORLD COMMERCE CORPORATION

装飾仕上げはなくても、時計は機能するのですが、あえて手間をかけて表面仕上げを施しています。

中にはすべて職人の手によって仕上げられているものもあります。

そうして完成された時計は、時間を見る以上の価値を生み、腕に着けて眺めたい貴金属、工芸品のような価値を付加されるのです。

今回はその装飾仕上げについて、伝統技法とその意味合いも交えつつご紹介していきます。

コート・ド・ジュネーブ (ジュネーブ・ストライプ)

▲ A. Lange & Söhne

フランス語で「ジュネーブの湖畔」と名付けられたその仕上げは、湖畔に打ち寄せる波をモチーフにしていると言われ、主にムーブメントの受け天面に施されます。

もともとは、パーツのバリ取り傷隠しとして用いられていたとも言われますが、現代においては装飾としての意味合いがほとんどです。

傾けると光の当たり具合で輝きも変化し、見るものを楽しませてくれます。

▲ WORLD COMMERCE CORPORATION▲ WORLD COMMERCE CORPORATION▲ WORLD COMMERCE CORPORATION

回転する工具に対してパーツをスライドさせることによりストライプ1条を加工し、それを平行に同様の加工を繰り返すことでストライプ模様を形成します。

回転工具をわずかに傾けて加工することが多く、そのため文字通り波上の平面となります。

同じコートドジュネーブでも、モノによってその様相は様々で、ソフトであったりシャープであったり、ストライプの幅が違ったりと、比べてみるとその違いが判ります。

加工の性質から、幅が広くて段差の少ないコートドジュネーブが最も難しい加工といえます。

▲ A. Lange & Söhne

◎ここがポイント!

①分割されたパーツにおいてもストライプがそろっている。

②コートドジュネーブされたパーツの端の面取りも均一で美しい。

なぜなら、ストライプごとの段差が大きいと面取りが均一になりません。

 

ペルラージュ

▲ A. Lange & Söhne

フランス語で「真珠模様」と言われるように、円形の筋模様を連続して施した装飾です。

その見た目から鱗模様とも称され、主に地板(メインプレート)に施されます。

▲ WORLD COMMERCE CORPORATION▲ WORLD COMMERCE CORPORATION

円形一つと同じ直径の工具を同心円状に連続して押し当てていくことでこのような模様となります。

簡単な工具を使った手作業で行われることが多く、ゆえに円と円との間隔均一具合で技術力や加工の丁寧さを見ることができます。

▲ Audemars Piguet

◎ここがポイント!

①円との円との均一な間隔

①小さな円の内側でもしっかり施されているか

 

筋目仕上げ (サテン仕上げ・ヘアライン仕上げ)

▲ A. Lange & Söhne

その名の通り、均一な筋目で仕上げられた表面仕上げです。

筋目仕上げを行う前の段階で平滑な面ができていないと均一に仕上がらないので、見た目はシンプルながら意外とパーツの加工精度が必要な加工です。

下地の大事さと、研磨仕上げを連想させることから、面精度の高い表面を象徴する仕上げとも言えます。

▲ Breguet

◎ここがポイント!

①筋目の細かさ

②筋目の均一さ

③端面の面取りにヘアラインがないこと

 

梨地仕上げ (サンドブラスト)

▲ Breguet

梨地のように、表面に微細な凹凸をつけたつや消し仕上げです。

小さな粒子を表面に吹き付けることで微細な凹凸を施しています。

この粒子の材質や大きさを変えることで、仕上がりのマット感を変えることができます。

鏡面仕上げ

▲ A. Lange & Söhne

その名の通り、鏡面のように光った研磨仕上げを指します。

時計では、ケースの仕上げで用いられ、ムーブメントでは、面取り部やねじ表面、特定のパーツで用いられます。

▲ Seiko Watch
▲ Patek Philippe

時計のパーツにおいては、光っていれば良いということではなく、部品の形状を変化させることなく、「面は面」として仕上げることが求められます。

特に角の仕上げにおいて、「面取り」と「角のダレ」は厳密に区別され、ダレば嫌われます。

▲ A. Lange & Söhne
また、鏡面とするには、コンパウンドと呼ばれる磨き粉の粒子を徐々に細かくして丁寧に妥協なく仕上げる必要があり、そうしてできた鏡面は黒光りした「ブラックポリッシュ」と呼ばれます。

サンバースト (サンレイ仕上げ)

▲ A. Lange & Söhne

太陽の光のように、中心から外周に向かって放射状に施される仕上げ。

香箱角穴車丸穴車、各歯車などによく用いられます。

▲ Breguet

工具と、加工するモノを共に回転させて中心から外周に向かってスライドさせて行います。

工具と加工するモノの回転がぴったり合った時に、外にまっすぐ広がる模様を作ることができます。

 

アングラージュ (面取り)

▲ A. Lange & Söhne

いわゆる面取りで、角を取る仕上げのこと。

主に2種類あり、角に対して45°の面で角をとるC面加工と、角を丸く仕上げるR加工があります。

特にR加工手仕上げで時間をかけて行われます。

▲ A. Lange & Söhne

見どころは角と角が内側で合わせる内角で、熟練技術者でも非常に難易度の高い加工とされます。

時計のムーブメントは、真鍮を中心に、シルバーなどの柔らかい素材で作られることがほとんどであるため、尖った角は非常にへこみやすい

そしてつぶれた角はしばしば機能的不具合を引き起こすことがあるため、アングラージュは装飾仕上げ以上に機能的な面からも非常に重要です。

つまり、面取り加工は角を取ることにより、パーツの美しさもさることながら、パーツの耐久性を高める大事な仕上げとも言えます。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか。
時計の装飾仕上げについて、理解いただけましたでしょうか。

裏スケの時計を今まで以上に楽しんでいただける一助になれば幸いです。

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