- 時計の振動数って何?
- ハイビートとロービートはどっちがいいの?
- なんでハイビートだと精度が高いの?
こんな疑問をお持ちの方に、現役時計修理師が、わかりやすく解説します。
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【解説】ハイビート or ロービート?機械式時計の振動数
振動数とは?
▲ Seiko
時計の振動数とは、「単位時間内に時計のテンプが往復する回数」を表す数値の事です。
言い換えると、テンプの往復運動の速さを示す値ということも出来ます。
機械式時計に耳を近づけると、「チッチッチッチッ」という音が聞こえます。
この音の「チッ」という一つの音が1振動です。
よって、この「チッチッチッチッ」の間隔が短いとハイビート、逆に長いとロービートになります。
時計のスペック表で、「28800振動/時」、「8振動/秒」、「4 Hz」等と見かけますが、こちらはすべて同義です。
「28800振動/時」は1時間にテンプが振動する回数。(片道で1)
「8振動/秒」は1秒間にテンプが振動する回数。(片道で1)
「4 Hz」は1秒間にテンプが往復する回数。(往復で1)
「28800振動/時」、「8振動/秒」、「4 Hz」はすべて同じ振動数で、現在最も主流の振動数です。
よって、これより高い振動数をハイビートと呼び、これより低い振動数をロービートと呼びます。
では、振動数はいくつがいいのでしょうか。
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高精度ならハイビート
▲ Seiko
一般的にハイビートとは、36,000振動 (またはこれよりも高い振動数) のことを言います。
メリットは高精度、デメリットは耐久性への懸念です。
では、なぜハイビート(振動数が高い)だと高精度なのでしょう。
それは、駒を想像するとわかりやすいです。ベイブレードでもいいです。
駒を投げる時、なるべく駒の回転が速くなるように投げてやろうと思いますよね。
それは駒の回転が速い方が、回転が安定して、外敵にも強いからです。
時計のテンプでも駒と同じことが言えます。
テンプの回転が速い方がテンプの回転が安定し、外乱にも強く、つまりは精度が安定するわけです。
また懸念点とされるのが、耐久性です。
振動のたびに時計内部の脱進器では、衝撃、落下、摩擦等が繰り返されていますが、仮に振動数が 1 Hz 高くなると、1秒間に2振動、1時間で7200振動増加して、一日では実に172,800振動も増えることになります。
その分、衝撃、落下、摩擦なども増加することになるため、耐久性の観点から、長らくハイビートは敬遠される傾向にあったのです。
しかし現在では、技術の改良が進み、シリコン素材や、新たな合金が生まれ、耐久性も飛躍的に向上しました。
なので耐久性への懸念は年々薄らいでいますし、さらなるハイビートの時計を開発するメーカーも出てきています。
そんなことから精度に着目して、技術の粋を集めたハイビートの時計を選択するのも選択肢として断然アリなのです。
ハイビートと時計と言えばこちら↓
①Grand Seiko「Evolution 9 Collection」Ref. SLGH005
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アンティークはロービート
一般的にロービートとは、18.000振動 (21,600振動や25,200振動を含むこともある) のことを言います。
ロービートのメリットは耐久性、デメリットは精度への懸念です。
ロービートはその名の通り、低振動数ということですが、現在主流の28.800振動に対して、低いということで、アンティーク時計専門誌「Low BEAT」の雑誌名となっている事からも分かるように、アンティーク時計の代名詞としても使われます。
ひと昔前まで、腕時計・懐中時計の振動数は、18.000振動 や21,600振動が主流でした。
それは、素材や製造精度、製造工程が現在ほど進んでいなかったため、耐久性が大きな問題点となっていたためです。
しかし現在では、素材や製造誤差が格段に向上し、また高度な調整が可能となったため、ロービートの時計であっても、高い精度を誇る時計が多数存在しています。
たとえ、振動数で劣っていても、現在までの技術の積み重ねで高い精度を誇る、ゆるやかな時計の鼓動に耳を傾けるのも一興です。
振動数の測り方と計算法
振動数は、時計固有のスペックで、変えることが出来ませんが、時計の歩度調整(時計の進み遅れの調整)をする上で重要な数値です。
しかし、現在では例え時計の振動数を知らなくても、歩度を計測することが可能です。
時計修理技術者は歩度測定器(タイムグラファー)と呼ばれる測定器を用いて、これを測定します。
時計をマイク内蔵の測定台にセットすると、測定器が刻音と呼ばれる時計の音を正確に感知。
その音と音の間隔を測定することで、即座に計算し、時計の振動数や歩度(一日の進み遅れ)、ビートエラーを自動的に表示してくれます。
また時計の歯車の歯数から、時計の振動数を計算することも可能です。
例えば、四番車の歯車の歯数が96枚、ガンギ車の歯車の歯数が20枚、カナ8枚 だとします。
四番車は一般的に1分で一回転ですから、ガンギ車の、1分間の回転数は、96÷8=12 回転です。
よってガンギ車の歯は一分間に、アンクルを 20×12=240 枚 通過します。
1秒間では4枚ですから、4Hz、つまり8振動となるわけです。
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その他の時計の振動数
・振り子時計 : 1振動/秒
・音叉時計 : 360振動/秒
・クォーツ時計 : 32,768Hz
・アトモス : 120振動/時間
・原子時計 : 91億9263万1770回振動/秒 (セシウム133原子)
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まとめ
いかがでしたでしょうか。
時計の振動数について、理解いただけましたでしょうか。
さらに時計の魅力を感じていただける一助になれば、幸いです。
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